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オフコース、ユウノウ! | プラッツからのメッセージ

金井 秀樹

 特に目的地や会うべき人がいない旅行で、それが外国の場合、何故かいつもその国に夜9時頃から真夜中にかけて到着する便を選ぶ人がいる。その人は何を隠そう、今までの自分である(笑)。おかげで飛行機チケット代約2~5万円の差額をケチったためにこんな状況に陥るとは!ということにたくさん遭遇することになった。例えばお国柄にもよるけれど、その時間帯に乗ったタクシーの運転手と、行き先と値段を巡る闘いに不足したことがないし、実際その長い戦いの後、疲れ果てて、もう自分で宿を探して値段交渉する気力もないという状態になることも多かった。だから本来なら、朝方に空港の職員に「ドウシタ体調デモ悪イノカ」と心配されていた方がまだ良かった、と思う時も1度や2度ではなかった気がする。そうでなければ、空港の出口で屈強そうな国違いの旅人を発見して、「一緒ニ街マデ行コウ」と頼んだら、「徒歩デ行クケドイイカ」、「イヤ遠慮スル」という展開になったり…。そして何とか夜中にたどり着けた宿で朝(もしくは昼)を迎え、大変な一夜ももう過去のこと、さて切り替えてこれから出かけようかと、いざ宿の玄関へ向かうと、全く新しい景色や音や匂いや熱気などに包まれた瞬間、急に気持ちが萎えて、「えーい、面倒くさい!好きで来たけれど、そもそもなんでわざわざ来たんだろう?」と考えたりする。

 

面談や居場所に来るようになった、アルバイトを始めたなど、「少しづつ今までと違うパターンで動き始めた本人達」に、一定の時間を経た後、「何かきっかけがあったのか?」などについて、教えて欲しいと頼んでみることがある。すると、そのやり取りの最初の段階では、もちろん全員が同じではないけれど、「何となく」、「今までの生活に飽きた」、「同じパターンが退屈になった」と答えてくれることが多い。そして実際はもっと入組んだ複雑な事情や正反対の感情が渦巻いていて、本当は絶対に一言では説明しきれないに違いない内容を、頑張って説明してくれる。だから、「今でも曖昧なところもあるし、本当のところは分からない」と留保しながらも話してくれる本人達が、とても頼もしく感じられこともある。余談としては、やり取りの最後にこう質問が返ってくるのも面白かった。

「なんでこの仕事してるんですか?」と。

 

ところで、先程の旅行の話に戻ると、

 

それでも、気を取り直して、街を歩いたり、観光名所を巡ったりしているうちに、いつも買い物に行くお店や朝食を食べるカフェの店員さん、どの街にも必ず居る、毎日いつも同じ場所に腰掛けている不思議なお祖父さんや、外国人が珍しい子供達、中には家に招いてくれるような特別な間柄になる人々等、様々な人達との交流が始まることになる(一つの都市に長く滞在する場合)。そしてタイミングはともかく、ある程度親しくなると、皆一回は一瞬真剣な眼差しで「どうしてここに来たの?」とか「どうして旅行しているの?」と訊いてくれる。そして、その質問をする時、いつも人々のその眼光たるやどうしてあんなにも鋭いのだろうと思う。本音では、「ええと、どうしてですかね?ご期待に添えるような、そんなに核心的な応えを持っていないのです。確かに名所旧跡巡りだけではない理由が他に何かあるかもしれません。でも例え理由があったとしても、自分でもどう説明したらいいのか分かりません。」と言いたいところだけれど、そんなまわりくどく、長い説明は聞く方が迷惑だと思ってしまう。だから、自分が誰かに同じ質問をして、今まで聞いた中で1番好きな答えは、間違いなく「オフコース、ユウノウ!(もちろん君はそれを知っている!)」である(笑)。

カテゴリー: スタッフエッセイ

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